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しゃべれども しゃべれども

古典落語を愛する
うだつの上がらない二つ目の落語家、今昔亭三つ葉が
しゃべれども しゃべれども_a0027742_11273539.jpgひょんなことから、 落語教室を開くことになった。

無口で無愛想な美女
同級生になじめない関西弁の少年
不器用で口下手な野球解説者..
彼らとの交流を通して
三つ葉自身も落語の魅力を再認識し、人として成長してゆく話。

美女と少年とおじさん..
生活スタイルも感覚も異なる3人が、集まっただけで
さも、何かが起こりそうな予感がする。
でも、それぞれにあまり多くは語らず
ただひたすら、落語を話し
合間合間のエピソードによって、話が紡がれていく。

重要なモチーフとなる「饅頭こわい」や「火焔太鼓」が
何度も何度も繰り返される。
同じ話でも、演じる人やその場の状況によって異なっていくのは興味深い。
ジャズのスタンダードの解釈に近いものがあると思った。



幼稚園で子どもたちと接していて、よく感じることだけど
同じような状況で、同じようなことを伝えたくても
例えば「おはよう」や「お片づけだよ」のコトバ一つにしても
相手によって、間合いや言い方を変えないと
幼い子どものココロには、響かない。
子どもは、コトバのままの意味を理解するが
コトバの表情を、敏感に感じ取るからだ。

数年前、子どもとうまく関われなくて、悩んでいた若い先生が
私の保育をよく見ていた。
視線を感じて振り返ると、いつも目が合うほど。
ある日、どこかで聞き覚えのあるコトバ.. と思ったら
彼女の子どもたちへの言葉掛けが、私とまるで一緒なのに気づいた。
声のトーン、間合い、子どもたちへの目線や位置..
気味が悪いくらい同じ。

彼女なりに努力してるのは、痛いほどわかったけど
やはり、うまく行かなかった。
コトバは台詞や呪文じゃないから。
その人や相手のキャラ、その場の状況によって
発し方や受け止め方が、ひとつひとつ異なるはずだもの。
その人らしさが感じられないと、生のコトバにはならない。

しゃべらなければ、伝わらないこと..
しゃべるだけでは、伝わらないもの。

コトバは重要だけど、コトバだけでは伝わらないものがあると
感じさせてくれた作品。

関西弁の少年役の森永悠希くん
あざとさを感じさせるほど、達者でうまい。
三つ葉のおばあちゃん役の八千草薫が
家事の間に、聞きかじりで覚えて話す落語も、とてもいい感じ。
師匠役の伊東四朗は淡々としていたけど、それもらしいと思ったり。

いつか、本物の落語を
間合いの緊張感に息を飲むほど、近くで聴いてみたいと思った。
原作は、いろいろなエピソードが盛り込まれているらしいので
これも、機会があったら読んでみたいと思う。

by keko_m | 2007-09-16 11:45 |  * movie